第1章

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「ごめん、ようこ。俺が作ってきたのはこの団扇だ」  そういって俺はお猿さんが映った団扇を取り出した。 「え、何で?」 「時間が経てばわかるさ」  俺は今年が申年ならいいな、と全く別のことを考えていた。  ライブが始まった。彼らはいきなり派手な登場をかまし、会場を沸かせていた。距離が近いため、彼らの動きが一層鮮明に映る。  ハイドは俺たちに水を掛けるようにペットボトルを投げてきた。それに対して、俺の彼女も興奮しているようだった。  今夜は俺が掛ける番だったのに……。  俺はそう思いながらぐっと団扇を握った。猿の団扇を持っている奴が考えていい妄想ではない。俺はもうきっぱりと諦めてライブを楽しむことにした。  ラルクのライブは絶好調で、3曲立て続けにおこなった後、ハイドがMCに入った。 「みんな、ありがとう」  そういいながらもメンバー紹介に映る。最後にユキヒロになった途端、俺は驚愕した。  彼も同じ団扇を持っているのだ。 「今日はありがとう、ドラムのユキヒロです。実はさっき面白い団扇を見つけたんだ。皆にはこの団扇の意味がわかるかな?」
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