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みんなはわからなーい、と叫んでいる。俺だってわからない。
なぜ彼が同じ団扇を持っているのかも、なぜこの団扇が彼を指していたのかも。
「これですね、猿の上に猿の子供が乗ってスティックを握っているんです。これが本当のドラ息子ってね」
会場が大きく沸く。若い女の声でおもしろーいと歓喜に渦巻く。
「え、たかひろ君?もしかして?」
「……そういうことだ、ようこ」
俺は男としての自信を取り戻していた。
「お前が好きなユッキーはここにいる」
「きゃー、ありがとう。嬉しい、宝物にするね」
俺は彼女に団扇をプレゼントする。こうなれば俺の団扇はハイジでも構わない。
ライブが終わり、俺たちはサンパレスを後にした。彼女は隣で嬉しそうに団扇を握っている。
「凄いね、こんなサプライズ初めてだよ。たかひろ君、ユッキーと友達だったの?」
「もちろん違うさ」俺はさりげなくいった。「ただ彼の感性と俺の感性が近かった、っていうことだね」
彼女は俺のセリフを聞いているのかわからないが、凄い凄いと褒めちぎった。
最高のシチュエーションだ。このままなら確実にホテルに行ける、そう確信するものが胸の中にある。
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