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彼女を連れ出し、駅とは逆方向に行く。すでに下準備は済んでいるのだ。後は勇気を振り絞るだけだ。
「ねえ、この辺り怖くない?」
ようこがぼそぼそと呟いているが、俺の頭の中ではどこのホテルに入ればいいのか迷っていた。
「暗いしさ……やっぱり帰ろうよ……」
俺は彼女の言葉を聴いて、心細くなっていった。
俺だって不安なのだ。初めて二人だけできた博多で安心できるわけがない。
高校生にはこの街はニューヨークのスラム街と変わらないのだ。
……そうだ、親父の餞別。
俺は何気なくポケットに手を突っ込んだ。すると自分の知らない感触が中にあった。
あの親父に今日は救われたのだ、ここは最後まで親父に託そう。
そう確信した俺は親父から貰ったものを引き出した。
そこにはカプセルボールが入っており、中には緑色のケロケロケロッピという蛙のキャラクターが入っていた。
「カエル、じゃねーよ!!」
俺は再び叫んだ。
あの野郎、どうせまた親父ギャグを飛ばしたのだろう。ラルクアンシエルじゃなくてカエルといいたかったのだ。
「ごめんね、たかひろ君。私が悪かったよ」
俺の怒りになぜかようこが謝り出した。彼女は俺の腕をぎゅっと握って続けた。
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