第1章

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 彼女を連れ出し、駅とは逆方向に行く。すでに下準備は済んでいるのだ。後は勇気を振り絞るだけだ。 「ねえ、この辺り怖くない?」  ようこがぼそぼそと呟いているが、俺の頭の中ではどこのホテルに入ればいいのか迷っていた。 「暗いしさ……やっぱり帰ろうよ……」  俺は彼女の言葉を聴いて、心細くなっていった。  俺だって不安なのだ。初めて二人だけできた博多で安心できるわけがない。  高校生にはこの街はニューヨークのスラム街と変わらないのだ。  ……そうだ、親父の餞別。  俺は何気なくポケットに手を突っ込んだ。すると自分の知らない感触が中にあった。  あの親父に今日は救われたのだ、ここは最後まで親父に託そう。  そう確信した俺は親父から貰ったものを引き出した。  そこにはカプセルボールが入っており、中には緑色のケロケロケロッピという蛙のキャラクターが入っていた。 「カエル、じゃねーよ!!」  俺は再び叫んだ。  あの野郎、どうせまた親父ギャグを飛ばしたのだろう。ラルクアンシエルじゃなくてカエルといいたかったのだ。 「ごめんね、たかひろ君。私が悪かったよ」  俺の怒りになぜかようこが謝り出した。彼女は俺の腕をぎゅっと握って続けた。
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