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「泣き言ばっかりいってごめんね、私も今日、たかひろ君と一緒にいようと思って家を出てきたの。だからちゃんと最後までしたい」
「ねえ、それってもしかして……」
彼女が真剣な面持ちでいう。
「……そういうこと、いいよ」
彼女は満面の笑みで頷いた。
その時に俺はやっと現状を理解した。彼女は俺の突っ込みが今日は帰らないぞ、という合図に聞こえたのだ。
彼女の誤解からだが、それでもいい。俺が今からやりたいのはそういうことなのだ。
……親父、あんた、最高に生かしてるぜ!
俺は心の中でそう叫んだ。親父のせいで俺の心は最初、雨のように暗く淀んでいたが、今は綺麗な虹が見える。そう、虹は雨が降らないと見ることができないのだ。
ノーレイン、ノーレインボーだ。俺は今から大人への階段を登るのだ。
……親父、俺は今から俺のライブ会場へ向かう。
親父を思いながら、俺は初めてラブホテルのドアを開けた。
もちろん、最初の曲はヘブンズドライブだということはいうまでもない。
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