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今日は帰りが遅くなる、しかも明日は休みだ。もしかすると、俺の初体験が今日か明日になる可能性がある。
今日は気合を入れていい所を見せなければならない。
「ねえ、たかひろ君。今日は誰の団扇持ってきた?」
……え?団扇?
俺は意味がわからず口をぽかんと開けていた。
「持ってきたんでしょ、団扇」
……ちょっと待てよ。
俺はSMAPの誰かを想像しながら思考に集中する。思い出した、昨日彼女とデートした時の会話だ。
俺は彼女とのデートに夢中で、彼女の話をほとんど聞いていない。適当に相槌を打っていたため、きっと彼女が団扇を作った話になったのだ。それで俺が頷いたため、団扇を作ってきている、という話になっているらしい。
もちろん団扇などない。盆踊り会場があれば入手できるのだが、残念ながらすでに過ぎている。今は秋だからだ。この電車の中で団扇になる代用品はない。
「ああ、あるよ」
俺は冷や汗を流しながらいう。この中にラルクの会場に行く者がいて、メンバーの名前が入っている団扇があれば言い値で買いたい。今日の財布はホテル代まで入っているのだ。最悪のケース、いや最高のケースを考えてだ。
「でも、今はちょっとね。人が多いし恥ずかしいしさ」
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