第1章

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「えーいいじゃん。誰の名前かだけ教えてよ」  ……誰の名前にしたらいいのだろうか。  ボーカル、ベース、ギター、ドラム、人気順で頭に浮かべるが一番多いのはボーカルだろう。 「ハイドだよ。もちろん」 「えー、たかひろ君、ケンがカッコいいっていってたじゃん。煙草くわえたまま演奏する所がさ」  もちろんそれもいった。俺がただ煙草を吸っているというだけで、ギターのケンに憧れているといってしまったのだ。もちろんギターなど弾けはしないし彼の演奏技術のレベルはわからない。 「まあ、そうなんだけどさ。やっぱりハイドがいるから、ラルクがあるっていうか……ラルクはハイドがいるから成り立ってるじゃん?」 「んー確かにそうだけど」 「だからさ、今日のライブはハイドに掛けているわけ、俺は」  ……ハイド、すまない。  俺は適当に述べた言葉を懺悔したくなった。俺だって好きなバンドだ、別に嘘をつくような要素はないし、団扇がない、というだけでラルクの曲は全て聴いている。だが今日は一つの可能性も削ることはできないのだ。  最高のシチュエーションを作ることに妥協はできない。 「ようこは誰の団扇、持ってきたの?」
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