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親父に渡されたものをポケットに突っ込んで俺は駆け抜けた。手の平で収まるものだった。早く戻らなければ彼女が待っている。
会場に戻ると、もうすでに始まりそうな雰囲気になっていた。彼女を見ると少しだけ機嫌を損ねているようにみえる。
「おそーい、もう始まるよ」
「ごめんごめん」
俺は謝りながら手に持った袋を隠す。鞄に入れてないため、外で買ったことがばれたらまずいからだ。
彼女に背を向けながら団扇の入ったビニールを破る。シンプルな作りに俺はそっと胸を撫で下ろす。親父、いい味だしてるじゃないか!
早速、一つの団扇を取った。そこにはマイクを持って歌っているアルプスの少女がいた。
「ハイジじゃねえよ!」
俺は団扇を引っくり返した。
「何、どうしたの?」
「いや、何でもない」
改めて団扇を確認する。そこにはハイジがマイクを持って、羊や山羊の前で歌っている姿があった。その横でペーターが箒でギターを演奏しており、後ろで木こりのようなおじいさんがヘッドフォンを掛けながらDJをしていた。
……あの野郎。
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