第3章 リスベラントへようこそ

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 両手でそれぞれの得物をグルグルと回しながら、時に打ち合い、時に放り投げている行為を見て我慢できなくなったルーカスが尋ねたが、その問いに二人は手を止める事無く、事もなげに答えた。 「何って、薙刀でバトントワリング?」 「槍を使っての棒術ですが、それが何か?」  それを聞いたルーカスが、こめかみに青筋を浮かべる。 「……ふざけているのか?」 「失礼ですね、殿下」 「気分転換に、真面目に遊んでいるに決まっているじゃない」 「あのなぁっ!!」  真顔で言い返してきた二人に、本気で声を荒げたルーカスだったが、ここで藍里の悲鳴が上がった。 「いたっ!! ちょっと悠理! 何をするのよっ!!」  その声に慌てて良く見ると、悠理がそこら辺に転がっている爪の大きさ位の細かい瓦礫を、藍里目がけて次々指で打ち出しているのが分かった。そして悠理は妹に文句を言われているにも係わらず、面白がる様に打ち続ける。 「何って、これ位の攻撃、無意識にかわせって。ほらほら」 「うっざ! グェ、マ、レイ!」  相変わらず藍華を回しながら、自分の周囲に透明な防御壁を展開させた藍里に、悠理は益々面白そうな顔になりながら宣言した。 「おお、上等。それじゃあ、こっちも本気で行くぞ! ジュード、ギア、ラシカ、ティ!」  彼がそう呪文を唱えると、これまでよりも更に大きな瓦礫が無数に浮かび上がり、しかもそれが炎を纏って一斉に藍里目がけて飛んで行く。 「何するの! 悠理の鬼! 悪魔!」 「おらおら、こっちは貴重なオフを、お前の為に使ってるんだ。暇潰し位させろ」 「来てくれなんて、頼んで無いわよ! 悠理の馬鹿ぁぁぁっ!!」  血相を変えて次々瓦礫を藍華で叩き落していく藍里を見ながら、セレナは思わず感想を述べた。 「ユーリ殿……、なんだか基樹殿と重なりますね」 「やっぱりあの一族と、必要以上に関わり合いたくない……」  そんなしみじみと実感のこもったルーカスの呟きに、他の三人は否定も肯定も出来なかった。
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