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迎えた、御前試合当日。すっきりと気持ち良く目覚めた藍里は、普通に朝食を平らげて、一度自室へと戻った。そして室内で軽くストレッチなどをして時間を潰した後、着替えを始めた。そして短めの白筒袖の道着に藍染袴を身に着けた自分の姿を、姿見で確認した藍里は、両腕に装着しているのが露わになっている紅蓮に、小さく語りかける。
「今日は、宜しく」
その囁きに応える様に紅蓮が一瞬だけ淡く紅く光り、それが消えてから藍里は部屋を出て、一階の玄関ロビーへと向かった。
「本当に、その恰好で行くのか」
袴に草履と、一見どう見ても戦闘に不向きな藍里の格好を見て、ルーカスは本気で眩暈を覚えた。しかしそれを、藍里が一笑に付す。
「当たり前よ。着慣れないチャラチャラした服より、よっぽど良いわ」
「武器はちゃんと持っているよな?」
「大丈夫よ。藍華はちゃんと紅蓮に入れてあるわ」
そう言いながら腕に付けている紅蓮を軽く叩いた藍里に、彼は呻いた。
「……とても不安だ」
「失礼ね。何がそんなに心配なのよ?」
「何もかもだ」
「本当に失礼な奴よね」
へそを曲げた藍里が彼に文句を言っていると、彼女同様普段着からのきらびやかな服に着替えを済ませた万里達が、明るく声をかける。
「頑張ってね? 私達は観客席で、応援しているから」
「なんなの、皆揃ってそのゴージャス衣装は。娘や妹が文字通り真剣勝負をするって言うのに、娯楽じゃないのよ?」
思わず藍里が母親に冷たい目を向けたが、万里は少し困った様に言い返した。
「だって御前試合って、半ば娯楽の一種だもの。見物に行く人は、皆こんな格好よ? 地味な格好をしたら、周りから浮くじゃない」
その主張に、藍里は思わず呟く。
「アラフォーで堂々と振袖を着た人が、今更何を」
「あら、藍里。何か言った?」
「何でも無い。あれ? 界琉だけ妙に地味ね。そんな格好で良いの?」
ここで家族の中で一人だけ、一切飾りのない上地味な色合いのシャツとベスト、すっきりとしたデザインのズボンとブーツという出で立ちの長兄に、藍里は不思議そうな顔を向けたが、彼は淡々と理由を説明した。
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