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「藍里の次に試合をするから、動きやすいようにな」
「それなら納得……、じゃなくて!! 『次に試合をする』って、何よそれ!!」
寝耳に水の話に、藍里が慌てて問い詰めると、界琉は怪訝そうに問い返した。
「聞いていなかったか? てっきり殿下達から、聞いているものだと思っていたが」
そこで視線を向けられながら言われた台詞に、ルーカス達が盛大に首を降った。
「俺達も初耳ですから!」
「そうか。じゃあそう言う事だから」
あっさりと話を終わらせた界琉に、唖然としたウィルが慎重に尋ねてみた。
「カイル殿。その試合、いつ頃に開催が決まりましたか?」
「うん? そうだなぁ……、ちょうど藍里の試合が決まった頃か?」
とぼけた口調で界琉が返すと、今度はセレナが若干顔を強張らせながら問いかける。
「因みに、対戦相手は?」
「アシミル子爵家のマース殿です。広い胸をお借りする気持ちで、戦いますよ」
そう言って嘘臭い笑みを振り撒いた彼を見て、ルーカス達は呻いた。
「よりにもよって、こっちも『ディル』……」
「普通だったら、かなり話題になる筈なのに」
「アイリ嬢の話題に隠れて、殆どスルーされていますね」
そんな囁き声を交わす同僚達とは違い、ジークだけは怒りを露わにして彼を睨んだ。
「わざとぶつけたのか?」
「愚問だし、お前にどうこう言われる筋合いは無い」
「…………」
そこで男二人が睨み合い、何故か一触即発の空気になった為、ルーカス達は勿論藍里も慌てたが、ここで間延びした声が二人の間に割り込んだ。
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