第3章 リスベラントへようこそ

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「この手の類は良く知らないが、多分そうだろうな」 「軽くスルーしちゃうの!?」  顔色を変えた彼女に、ルーカスは軽く首を傾げただけで再び歩き出したが、その前に突如として炎の壁が発生した。 「きゃあっ!! なんでいきなりこんな火が!?」 「良い燃えぶりですが、ガソリンを仕込んだ普通の火ですね。ウル、二アー、エスタ」  しかしセレナは冷ややかな視線を向けつつ呪文を唱えると、ものの数秒でそれが消失する。 「セレナさん? 水はかけて無いわよね?」 「燃えている箇所の周囲限定で、真空状態を作り出しました」 「……酸素が無かったら、燃えないわね」  そうして再び歩き出した藍里だったが、襲撃を受ける度に、周囲から聞こえてくる悲鳴や怒号について、一応周囲に確認を入れてみる。 「周囲の被害が甚大な気がするけど?」 「気のせいです」 「……そうですか」 (やっぱり『ディル』なだけあるわ、この人達)  藍里は改めて、彼らの能力の高さを実感しながら、正宮の正面玄関まで辿り着いた。そして藍里とセレナは用意されていた馬車に、男性陣は馬に騎乗して、央都内にあるグレン辺境伯邸に向かう。その馬車がリスベラント公宮の正門を抜けて走り出してから、ものの五分程で、外の景色を眺めていたセレナが呟いた。 「着きましたね」 「ここが……、は? 何、あれ!?」 「アイリ様? どうかされましたか?」  窓から外を眺めて、いきなり素っ頓狂な声を上げた藍里に、セレナが訝しげに尋ねると、彼女は困惑顔で問いを発した。 「常識的に考えて、これだけの敷地がある貴族の邸宅って、屋敷の周囲に庭園が作られるものじゃないの? これって、私の偏見?」  すると何故かセレナが、微妙に視線を逸らしながら答える。 「いえ……、確かにこの屋敷がグレン辺境伯の手に渡るまで、それは見事な庭園がありました。何と言ってもこの旧オランデュー伯爵邸は、公宮を除くと央都一の規模を誇っておりますので」 「それなのに、どうして敷地一面が畑なの?」  視界一杯に広がる、良く耕された地面に、緑の葉や実を付けている名も知らない植物が整然と、幾重にも列をなして植えられている光景に、藍里は納得がいかない顔付きで更に尋ねた。それに溜め息を吐いてから、セレナが言いにくそうに告げる。
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