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「だってそうでしょ、アタシがセーメイ様をやろうって言い出したんだよ。
それに思い出したんだ、セーメイ様が帰らないのを由衣のせいにした。アタシはその事を由衣に謝っていない……もう謝ることもできない……」
凜の頬に涙が伝った。
「責任の奪い合いはこれまで」
母の言葉が口をついて出た。
「え?」
「誰のせいだとしても、もう由衣は帰ってこない。だから今できることを考えた方がいい」
凜は頬の涙をぬぐった。
「そうだね……」
「わたし、験力の使い方を覚えるために福島に行く」
「それって転校するってこと?」
香澄が寂しげな表情になる。
「多分そうなると思う……」
「こっちじゃ出来ないの? おじさんもその能力を使えるでしょ?」
「もう二度とこんな事を起こさない、そう決めたの。そのためには、おじいちゃんに教えてもらった方がいいと思う。おじいちゃんは本物のお坊さんで、験力のスペシャリストなんだって」
実際に悠輝からは、祖父は真言宗系列の修験寺の住職で副業で拝み屋をやっており、験力の扱いには長けていると言われた。
「朱理ちゃん、オジコンなのにいいのぉ?」
香澄の言葉に思わず凜が微笑む。
「わたしはオジコンじゃない! それにおじさんも一緒に福島に行くし」
「じゃあ、ラブラブだねぇ」
「降矢のことはもういいんだ?」
「だから降矢くんの事だって別に何とも思ってない!」
「プッ、ハハハ……」
「アハハハ……」
「フフフ……」
三人の笑い声が病室に響いた。
再び笑えるなんて思っていなかった。
「朱理、戻って来るんでしょ?」
ひとしきり笑うと、凜が真顔に戻って聞いた。
「うん、どれぐらい時間が必要かわからないけど、お父さんはこっちに残るし、必ず帰ってくるよ」
「待ってるからねぇ。戻ってきたら、また一緒に遊びにいこう」
「うん、約束する」
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