第1章

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僕はどうしてここにいるのか。 血塗られた剣を右手に垂らし、力なく倒れていく「誰か」を見下ろした。 僕は何のために彼を殺し、彼は何のために死んだのか。 この小さな紛争の意義はなんだったのか、知っている人間はこの戦場にいないのだろう。 きっと、誰もそんなことに、気づきもしない。 ただ目の前の「死」から逃れるため、金を稼ぎ、女を買い、欲望で思考をみたす。 それは、それぞれが帰りゆく場所で待っている死刑台から逃れるため。背後に感じるその気配から、その寒気から、その恐怖から。 ほとんどかたのついた戦場を見渡し、その血塗られた人々に尋ねてみたかった。 「何のために生きている?」 とにかく僕は、剣を握り直し、そして、新たな、無意味な死を生み出し続けた。
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