1章 -惜別-

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 僕が仲間に入れて貰った“アラワシ団”は、誰でも入れるわけではない。何かひとつ特技や能力があって、それがリーダーの克吉(かつよし)に認められる必要があった。  と言っても敷居はそんなに高くなく、僕は漫画のキャラクターを描くのが上手いというだけで入れ、天野君に至っては一発ギャグが面白いというだけで入れた。  天野君は僕とは正反対に、とにかく明るく、いつも笑っていた男の子だった。  天野君、元気にしてるかな。突然行ったら驚くだろうな。てか忘れられてるかも。なんせ殆ど話した事なかったし。  そんな事を考えながら電車を乗り継ぎ、3時間以上かけて僕が辿り着いた場所は、巨大な集合住宅地だった。  似たような団地がいくつも並びまるで迷路に足を踏み込んだ気分。それでも年賀状という地図を頼りに、バッジというお宝を求めさ迷い歩いた。  やがて、僕はあるドアの前で足を止めた。表札に見えた“天野”の文字。確信を得た僕は、思い切ってインターホンに指を伸ばした。  しばらくしてドアがゆっくり開き、中からほっそりとした女の人が出て来た。天野君の母親だった。
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