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「桜が咲き始めた頃だったわ。笑太が天国に旅立ったのは」
予想だにしない状況にショックでしばらく呆然と突っ立ったままでいると、おばさんに促され僕は天野君の前に正座した。
親しい人が亡くなったのはこれが初めてだったので、当然焼香のやり方など分からず、僕はただ手を合わせる事しかできなかった。
「実は、笑太は病気だったの。それで、大きな病院に入院する為に転校したの。別に学校はそのままでもよかったんだけど、ずっと休んでるとみんなに心配をかけちゃうからって、それで、みんなとお別れしたのよ」
やや上擦ったおばさんの話を聞いて、僕は思った。
きっと天野君は知られたくなかったんだ。いつも明るく振る舞って、みんなを笑わせていた自分が、命に関わる重い病にかかっていたなんて。
鼻を啜る音だけが聞こえる室内で気まずい空気に呑まれていると、僕はようやく当初の目的を思い出した。
「あの、笑太君の物ってまだありますか?」
「ええ。全部取ってあるわ。隣の部屋にあるから好きに見てもいいわよ」
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