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築四十年は経つ、おんぼろアパートの階段を上がる。
二階の角部屋の鍵を開けると、一DKの狭くて年季の入った部屋が出迎えてくれた。
部屋に入るとまず目に入るのが、小さなテレビとちゃぶ台と座椅子が二つ。
掃除はまめに隅々までしているけれど、壁のシミや窓やキッチンのステンレスについた錆はもう落ちない。
母がいた頃は、こんな古くて狭い家でも楽園だった。
小さな電球の明かりでも、部屋の中は隅々まで明るく感じたし、冬でも身を寄せ合っていれば暖かかった。
決して広いとはいえない部屋なのに、今はこの部屋を持て余してしまっている。
無機質で底冷えのする部屋だと感じるようになってしまった。
もしも母がこのまま帰ってこなかったら……。
そう思うと芯から冷えるような心持ちがして、ブルっと震えた。
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