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オードブルを物色していると、向こう側のテーブルに輝くブラックパールが乗っている食べ物が目についた。
あ!あの黒い粒々はもしやキャビア!?
目を輝かせながらキャビアに近付く。
美人が集まっている取り巻きに近付いてしまっていたけれど、キャビアを取る方が先決だった。
さっさと取って退散すれば問題ないと思っていた。
美人たちの輪を掻い潜ってキャビアに手を伸ばす。
お目当ての物を取り、お皿に盛って、さて戻ろうとしたその時だった。
興奮した様子の美人の一人が、私の背中にドンっと当たってきた。
よろめいて体勢を崩す。
「ああ!」
私の声に驚いた取り巻き達がサッと身をかわすと、たくさん食べ物を盛ったお皿が中心にいた人物に当たり、私も前のめりに床に転んだ。
ガシャーンという大きな音が大ホールに響き渡った。
……やってしまった。
床に手をつき、散乱した食べ物を見つめながら、全身から血の気が引いていった。
見上げると、漆黒に輝く細身のタキシードを着こなした背の高い男が、眉間に皺を寄せて私を見下ろしている。
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