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何やってんだろ、私……。
できることなら今すぐこの場からいなくなりたい。
私はこんなところにいていい人物じゃない。
彼を取り巻いていた美女たちからの蔑むような視線を浴びながら、私だっていたくてこの場所にいるわけじゃないと声に出して言いたかった。
やっぱり、来なきゃ良かった。
唇を噛みしめ俯いていると、彼が急に私の手をぎゅっと掴んだ。
「お前も汚れているじゃないか。一緒に来い、着替えるぞ」
「えっ!?」
驚いて顔を上げた瞬間、彼が大股で歩き出したのでつんのめりになりながら手を引かれて進んでいく。
取り巻きの美人たちも驚いているけれど、彼が有無を言わさぬ態度で歩いていくので、誰も声を掛け追いかけることができない。
静かな威圧感を放つ彼の手を振りほどく勇気などなく、ただただ驚き狼狽えながら小走りで付いていく他なかった。
大ホールを出て、警備員が塞いでいた道を顔パスで通りぬけ、どんどん船内の奥へと進んで行く。
一体どこに連れて行かれるんだろうと冷たい汗が背中を伝った頃、ようやく彼が止まった。
掴んでいた私の手を解き、豪華な客室のドアを開ける。
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