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蛇に睨まれたカエルのように萎縮してしまい、なかなか財布が取り出せずモタモタしてしまう。
慌てれば慌てるほどなかなか財布が見つからない。
「金?いらん。貧乏人から貰うほど困っていない」
彼の薄い唇から発せられた冷淡な言葉に、思わず下を向いたまま体が硬直した。
……貧乏人?
今、貧乏人っておっしゃいました?
失礼すぎる言葉に、眉間に皺を寄せながらゆっくりと顔を上げると、彼は飄々とした態度で見下すように私を見つめている。
「そのあきらかに安そうなワンピース。みっともないからドレスに着替えろ。ほら、どれがいい?」
そう言って、クローゼットから見るからに高級そうなドレスを次々と出してきてソファに投げかけた。
「……結構です」
怒りが沸々と湧いてくる。
なにこの上から目線。
あんた何様のつもり?
「遠慮するな。選んだドレスはくれてやる」
「いりません」
睨み付けながら言ったにも関わらず、彼は私が怒っているのが気付かないようで、「どれがいいかな」と言って自らドレスを選び始めた。
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