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「ドキドキするだろ」
不敵な笑みに上から目線のその言葉に、一瞬で甘い気持ちが吹き飛んだ。
「まったく、これっぽっちもドキドキしない。むしろ汗臭くて不快」
自信過剰の俺様男に軽蔑の眼差しを向ける。
「は?汗臭い?なら返せよ!」
タキシードを取られそうになったので、ぎゅっと掴んで身を丸めた。
「不快極まりないけど、寒いからこれで我慢する!」
「ああ、もう勝手にしろ」
呆れたように、ふいっと顔を横に逸らした彼。
第一印象は、威圧的で感情を表さない冷たい男に見えた。
でも話してみたら、意外と幼いところがあるというか人間らしいというか……。
まあ、どっちにしろ嫌いなタイプであるということに変わりはない。
「お前さ、誰の紹介でここに来たの?」
彼は手すりに手をかけて、興味深そうに私を見た。
「紹介なんかじゃない。商店街の福引きで一等を当てたの。そしたら景品がここの参加券だった」
私の返答に、彼は「ぶっ」と噴き出して笑った。
「景品?ここの招待券が景品にされてたのか。誰か転売したのかもな」
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