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「あら、凄いじゃない!何が当たったの?」
母の顔に笑顔が戻る。私にとって、これが一番の景品だったかもしれない。
一等が当たって良かったと思った。
「それが……、豪華客船でのパーティー券だったの!いらなぁーい!」
もったいつけてから、オチを言うように明るく言った。
とんだ一等の景品ね、と言って母も笑ってくれるかと期待していたのに、母はきょとんとした顔で私を見て言った。
「……どうしていらないの?」
「え?だって、パーティーだよ?しかもセレブばっかりが集まるパーティー。
退屈そうだし、何より弁当屋が忙しいし……」
「素敵じゃない。行ってきなさいよ。
ここのところ、ずっと休みなく働いていたんだから、息抜きも必要よ」
「ええ、でも……」
渋る私に、母はなおも強く推してくる。
「お母さんがこんなことになって、胡桃はずっと頑張ってきたんだから羽を伸ばして楽しんできてよ。
そしてお母さんにどんな集まりだったのか教えて。
胡桃の話を聞いて、お母さんも行った気になって楽しむから」
弾んだ声で無邪気に言う母を見て、心が揺れた。
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