第二章

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― 一四話 ―  私はライトが痛む腹を押さえているので、自分なりにかなり心配をした。 「ライト、大丈夫ですの?」 「な、なんとか、なりそうです」  私は、こんな時こそと思い、部屋の花瓶に生けてあった、前世でいうところの薔薇によく似た花の花びらを一枚千切り、普段は面倒なので手袋で隠している、羽の形のあざから、自分の羽ペンを取り出した。 「姫様?何をなさるおつもりですか・・・?」  私はシャドウの問いには答えず、静かに花びらに羽ペンを滑らせる。 「「胃薬・・・?」」  そう、私が花びらに書いたのは、こちらの言語で『胃薬』。  私のこの羽ペンで書いた言葉は、『事実』になる。この羽ペンで物事を綴ってしまえば、すべてが『事実』になる。  幼い時に私は、この羽ペンを使ってこっそりと物語を書いていた。  一人の名もない、貧民街で育った少年が、『リズフェリト商会』を立ち上げ、様々な嫌がらせを受けながらも、その商会を国一番の商会にするという、下剋上の物語だ。  しかもその少年は、最後には、国の第三王女と結ばれることにしていた。  するとどうだろう。本当にリズフェリト商会は発足し、この国の第三王女は平民と恋に落ち、王族と名乗るのをやめ、平民に身分を落として二人は仲睦まじく過ごしている。  それを知って私は愕然とした。  それから物語は、決してこのペンを使って書かないと決心した。  まあ便利なことには便利なので、こうやって消耗品くらいは時々作っている。 「これを飲めば大丈夫よ。お腹が痛くなくなりますわ」 「本当でしょうね・・・?  ま、姫様から頂きましたし、飲みます」  そういうと、ライトは、シャドウに水を用意してもらうなり、私の作った胃薬を飲んだ。 「・・・味も効果も、普通の胃薬と大して変わりませんが、効いたようです。  しかしその羽ペンは便利ですね・・・。見た目が変わらないのがあれですが、ガラスの破片に刃と書けば、本当に刃がつきそうですよ」 「色々と試してきたので、効果のほどは心配してはいませんでしたが・・・。  次からは、ライトの言ったように、別の物に別の者の特性をつけることが出来るのか、試したいですね・・・」  私は真面目な顔つきで思案していたとき、ノックが部屋に響いた。 「失礼いたします。陛下がお呼びです、姫様」  猛烈に嫌な予感がした。
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