第二章

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― 一五話 ― 「お父様からの呼び出し…ねえ?」 「きっと先ほどの事で、色々と聞きたいことでもできたのでしょう」  シャドウがとてものんびりとした口調でいうので、私も自然とのんびりとした気持ちになってきた。  私はゆっくりと深呼吸をすると、対貴族用の戦闘用の顔、『ふんわりおっとりとした姫君の微笑』を装備した。  そして、ゆっくりと扉が開くのを待ち、軽やかに足を踏み出した。  私が廊下を歩いていくと、使用人たちが道をあけてくれて、頭を下げる。  その時に、見慣れない新顔の使用人がいることに気が付いた。 「あら、あなた、初めて見る顔ね。  名前は何というのかしら?」 「は、はい!私は、レーニャ…レーナと申します」 「ふふ…。これから宜しくね、レーナ。あなたが出世して、私の側仕えになってくれると嬉しいわ。これはお世辞じゃなくて本心よ。 ……待ってるからね」 「…っつ!!はい、必ず!!」  私はそのまま歩いていく。  シャドウとライトは私の考えが完全に分かっているようで、渋い顔をしたままだ。それははた目には、使用人に構い過ぎる、世間知らずのお嬢様なのだという顔にしか見えないが、実際は違う。  私の対使用人の必殺奥義『新しい子とお局様にはいい顔を使用』である。  これは前世でも非常に役にたったらしい。しっかりと記憶に残っている。  私は謁見の間の扉の前へとたどり着き、扉を守っている騎士に声をかける。 「お仕事お疲れ様、リック、ユーリ。  お父様はもうお着きなのかしら?」 「はい!姫様!」 「陛下はお着きです!」  私は「そう…」と言い、少し憂いのある顔をする。  すると二人は顔を見合わせ、励まそうとしてくれる。 「大丈夫ですよ、姫様!きっと悪いことなんてありませんって!」 「そうっすよ!このユーリが言うんですから、間違いないっす!姫様!!」  私はゆっくりと目を開け、花が咲くように笑って見せる。  そして柔らかく、可憐な声をしっかりと作り言った。 「ありがとう、リック、ユーリ。おかげで元気が出ましたわ。  お仕事、これからもがんばってね!」  二人はすっかりとろけてような顔になって「はい!」という。  ライトなぞ、可愛そうなものを見る目で見ている。  これは対男性騎士専用『好意は最高調』という技だ。  私はそのまま謁見の間へと入っていくのだった…。
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