第一章

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― 第二話 ―  どうやら骨が折れてしまっているようだ。  あばら骨が変な角度で飛び出てしまっている。  折れたところは痛くないのだが、折れた骨が周りの血管や筋肉を圧迫しているせいで、とてつもなく痛い。  ここで泣いたりすれば、ついこの間まで一緒の部屋だった、フェルデのように、また殴られ、蹴られ、しまいにはぼろ雑巾のようになって死ぬのだろう。  私は痛くてたまらないので、この間貴族の神官がけがをした時にやっていた、回復魔法を使う。  しかし、祝詞をあげているところを見られたら、また痛い目を見るので、こっそりとつぶやくにとどめようと思う。  我ながら賢い案だと思う。  もしこれで大丈夫だったら、今度は心の中で詠唱するにとどめよう。 「(癒しの女神、フロッティーナよ。わが祈りを聞き届け、我に女神の祝福を。わが身に降りかかりし災いを癒し給え。我、神がために魔力を奉納せん)」  …おお。完全にけがが治ってしまった。  女神の祝福は素晴らしい。  しかし、本当に女神がいるのなら、どうして私のような子供を放っておけるのか、ぜひ一度問いただしてみたいものだ。  それにしても、私の魔力はかなり多いようだ。  あれだけのけがを治したのだから、かなりの魔力を必要としたはずだ。  それなのに、魔力切れも起こすことなく平然としていられるとは…。  私って、けっこうすごいかもしれない。  まあ、前世の記憶持ちなんだから、とてつもなくすごいんだけど。  さらにレア度が上がった気がする。  もう、絶滅危惧種並み?それとも、UМA!?  ……無駄な前世の記憶。使い勝手が悪すぎる。  こんな思考回路、三歳児じゃあない。明らかに十六か十七歳の少女位。  神様、こんな前世の記憶なんてものよりも、私に、もっと充実した人生を下さい。  こんな残念な記憶や環境じゃあ、宝の持ち腐れと言うかなんというか。はっきり言って、迷惑この上ない。  孤児である私が、かなりの量の魔力を持っていても、余計なやっかみの対象にしかならないってことを、誰でもいいから神様たちに教えてやってください。  このままだと、自分の未来がぼろ雑巾のようになって死ぬか、貴族に飼殺されて一生を終えるかしか想像できないんですけど……。
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