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― 第六話 ―
「では、後はお前達に任せることにする。
この方に着替えと湯あみ、それから食事を。頼んだぞ、『ライト』と『シャドウ』」
「「かしこまりました」」
え?声が二つ…?
この部屋には、私と神殿長、それから護衛騎士様しかいないはずじゃあ…?
「では、私がご案内します。『シャドウ』は、先に部屋で用意をしていてくれ」
「分かった。急ぐ」
え?上から!?
「えええ!?どうやったら天井に立っていられるんですか!?
というか、走って…!もういないし!」
もう、思い切り、『アンビリーバボー!!』って叫びたい!!!
「では行きましょう。
失礼しますね」
はい、定番のお姫様抱っこ(背が足りなさすぎて、抱えられるようになってるけど)!!
と言うか、この騎士様、かなりいい声なさってる。
もう、耳から溶けちゃいそうなんですが!!
「失礼します」
そういって、私を抱えた騎士様は、そのまま、貴族の神官の居住区へ入っていく。
「あの、きしさま。えっと、その」
「ああ、私の事は、『ライト』と呼んでください。
一応役職…仕事の名前です」
「じゃあ、らいとさま。その、私のなまえって、そんなにとくべつなんですか?」
「ええ、そうです。
時期が来れば、そのお名前がどういう意味を持つのかが、きちんとお分かりになるはずです。
今は、気になさらないでください」
……かなり気になるけど、ここで尋ねてしまえば、三歳児ではない。
「わかりました」
ここは素直に返事をしておくに限る!
「着きましたよ」
私は眼が飛び出るほど驚いた。
目の前の扉は、驚くほど細かい細工のされた、金属のドア。
しかも、金色の地に柘榴のような植物の絵が彫り込まれ、実の部分と花には、赤い石、茎には茶色の石、葉には緑の石がついている、豪奢なドア。
石は多分、宝石なのだろう。
ものすごく綺麗だった。
「あの、なんだか、ばちがいなきがします」
「お気になさらず。すぐに慣れるでしょうし、これでも、本来あなた様がお使いになるであろう部屋より、質素です」
「そ、そうですか」
もう、何も言えない…。
一体全体、私が何者なのか、自分自身でも分かりません!
誰か親切な方、私に、私が何者なのか、教えてください!!
「入りますよ。『シャドウ』が待ってます」
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