第一章

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― 第七話 ―  『シャドウ』がいるというが、部屋の中からは物音一つしない。  意を決して扉に手をかけると、手から何かが抜け出るような感覚がして、思わず手を離すと扉はゆっくりと内側に開いていく。 「あ、あの…?」 「これでいいのですよ。さあ、中へお入りください。お疲れになられたでしょう」 「は、はあ…」  私が恐る恐る中へ入ると、そこには一人のメイドがいた。   「め、メイドさん?」 「初めまして、ルチア・ガーネット・ジュエル様。わたくし、『シャドウ』と申します。  以後、ルチア様のお世話をさせていただきます」 「は、はい。よろしくおねがいいたします」  私が戸惑いつつも会釈をすると、満足そうに微笑んだ『シャドウ』は、「お着替えを」と言って、あれよあれよと言う間に私をどこかの貴族のような服に着替えさせた。  私はそれでも精一杯状況を飲み込もうと必死だった。 (三歳の幼児相手に、どうしてこうもいろいろできるわけ…?)  着替え終わり、手袋をつけさせられるときに、『シャドウ』が私の左の掌のあざに気が付いた。 「ルチア様、このあざは何ですか?  なぜだか神々しいような気がするのですが…」 「これは、うまれたときからあったとかで、きれいですよね」  そういって私はそのあざを右手の人差し指でなぞった。  次の瞬間、眼も開けられないような光線が掌から放たれた。 「な、何事だ!?」  突然の事に、慌てた『ライト』が腰の剣を抜いた。  光が収まって、ふと自分の手を見ると、私はこの世にほかにないほど神々しい光を放つ、羽ペンを持っていた。 「は、はねぺん…?」  なんとなく左手の掌を見ると、そこにあった羽のような形のあざはなかった。 (もしかして、このあざから出てきたわけ…?)  私は目を瞬いた。 「これは…。  ルチア様、あなたはその魔道具を生まれながらに持っておられた…。  やはりあなたがそうなのですね」 「え…?」 「あなたは、この国を三つほど超えた先の国、トヨアシハラ国の第一王女殿下、並びに、次期国王陛下です」 「…つまり?」 「あなたは王女様です。そして、次の王様になります」 「ええーー!!?」  こんな衝撃の事実、知りたくなかった…!  でも、これで筆記用具に困らないんだから、好きなだけ文字が書けるし読めるよね!!
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