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― 第八話 ―
もはや現実逃避の一環として、こんな風に考えることしかできなかった。
「で、でも、どうしてわたしがおうじょさまだってわかったんですか?」
「それは簡単なことです。
あなたが手になさっているその羽こそが、王位継承に必要な『神の許し』と呼ばれる羽だからですよ?」
シャドウはそういうが、私にしてみれば、綺麗というか神々しい光を放つ羽ペンでしかない。
あくまでも羽ペンである。
「じゃあ、もじをおしえてください!」
「・・・どういう流れでそうなったのかはわかりませんが、それはルチア様がやらねばならぬことの一つですので、精一杯お教えいたします」
よし!これでこの世界の文字で書ける!
そうすれば、この世界でも小説家として生きていける!!
「ありがとうございます!シャドウさん!」
「シャドウで結構です。それに敬語もおやめください。本来のお立場ならそうしなければなりませんから」
「シャドウの言うとおりですよ、ルチア様。
・・・しっかりとシャドウの言うことを聞いてくださいね」
「わかってます!ライト!」
私はご機嫌だった。やっと文字が書けるようになるうえに、今までのただつらいだけの生活から抜け出すことが出来るのだから。
そのために、ちょっと思いついただけの気まぐれな発言だったはずなのに、私が「うーん、からだもきたえないといけないよね」と言っただけだったのに、ライトが顔をきらきらさせて、「ならば私が鍛えて差し上げましょう!」って言いだして、今まさに、神殿の裏庭で、剣をふるうことになっている・・・。
「ルチア様!それではいけません!もっと全身を使わなくては!」
「はあ、はあっ!、はあ、はあ、っ!ふっ!」
「その調子です!はい、あと二〇回!」
なんだこの鬼畜野郎!!三歳の幼女(栄養失調気味)に素振りを一〇〇回もできるほど、体力があるわけがないでしょう!?
そんでもってシャドウ!そこでお茶を作ったり、お菓子を並べたりしていないで、この鬼畜野郎から私を助けてよう・・・!
「ほら!集中してください!あと五回ですよ!」
「うう・・・。っつえい!・・・はっ!はあっ!・・・ふっっ!・・・・・・やあっ!」
「はい、今日はここまでです。シャドウ!」
「はいはい。
お疲れ様です。よく我慢なさいましたね」
ああ、癒される…!
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