スプリンター

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自分を含め、8名の選手がスタートラインに立つ。 冷静に一緒に走る顔ぶれを見て、この組に自分より早い選手はいないだろう。 合図とともに一斉にスタートする、最初の30mで視界に他の選手は見えない、後半に強い俺は、その時点で勝利を確信する。 当たり前のように、一位でゴールテープを切るが、そこに喜びの笑顔などない。 この大会を出場する前から、次の決勝しか俺には見えていなかった。 監督が先ほどの予選タイムを持ってきた、それを見て今年こそはいけると確信した。 去年、【宮間】が全国大会を優勝した時のタイムより0.5秒も早い。 宮間祐介、100メートル走の高校チャンピオン。 俺、草薙亮司が小学5年から7年、一度も勝つことができない相手。 同学年の宮間が、同じ地区にいるおかげで、俺は一度も全国大会に出場することができない、タイムでは宮間以外の誰にも負けていないのに。 高校最後の大会、この大会で絶対に俺は宮間に勝つ。 次の予選7組で宮間が走る。 それを近くで見るためにコースギリギリまで近づくことにした。 スタートラインに選手が並ぶ、宮間は4コースだ。 ここで俺は宮間のある変化に気づく・・ 「あいつ、なんか体絞りすぎじゃないのか・・」 以前見た時と明らかに違う、宮間の体型に不思議に思っているとスタートの合図が出る。 体を絞った結果なのか、手足の運びはスムーズで早い! 力強さは無くなっているが、タイムは悪くないように見えた。 「少しセーブして走ってるのか・・・手の内を俺に見せないつもりだな・・」 無難に宮間は一位でゴールする。 それを見届けると、俺はグラウンドを後にする。 決勝は1時間後なので、少し控え室で休むことにした。
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