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決勝スタートまで20分、俺はウォーミングアップを始める。
入念にストレッチをして筋肉をほぐす。
これが最後のつもりで、万全の態勢で臨む。
係りの人が声をかけてくる、もう時間だ、いよいよ宮間を倒す時が来た。
決勝のスタートラインに前で体をほぐしながら合図を待つ。
俺は5コース、宮間は4コースだ。
目をつむり、天に顔を向けて集中している宮間に声をかける。
「宮間、今年は俺がもらうぞ」
そう言うと宮間が清々しい微笑みを俺に返してくる。
クソッ・・余裕のつもりか・・・
合図があり、全員がスタートラインに立つ。
スタート態勢に移り、最後の合図を待つ。
そこで宮間が独り言のように俺に語りかける。
「草薙、今までありがとうな」
「今年はお前の勝ちだ」
「え?」
パーーーン!
スタートの合図に体が反応する。
スムーズに体が動く、スタートダッシュは今までにないぐらい早い。
手足を動かし、ズンズンと加速する。
30メートルほどで最高速に達し、俺の視界には誰もいない。
隣の宮間の気配すら感じず、俺は独走でゴールを目指す。
そのままスピードは減速することもなく、俺は人生最高の走りでゴールする。
「やった勝ったぞ!俺の勝ちだ!」
「宮間、今年は俺の勝ちだ」
しかしその時会場の異常な雰囲気を感じて辺りを見回す。
「あれ・・宮間・・・」
さすがにゴールしているはずの宮間が隣にいない・・
俺は宮間を探し見回す。
宮間はまだスタート地点にいた・・・・
うつ伏せに倒れ、スタートから動いていなかった。
救護係りが宮間の元に駆けつける。
しばらくすると救急車の音が聞こえてくる
俺は放心状態で、その音をただただ聞いていた。
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