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照りつける太陽、煌めくビーチ、エメラルドグリーンに輝く海。
「海だー!」
入社して3年、仕事に明け暮れ、遊び・観光の類からはかなり縁遠い生活を送っていた私にとってその光景はとてつもなく眩しかった。
テンションが急激に上昇し、完全に気持ちが学生気分になったところで横から水を差される。
「お子様ね。あんた海の中入って泳ぐことしか考えてないでしょ」
「そんなことない。ビーチでも遊ぶ。後でバレーしよ!」
「大人の女のくせに色気もへったくれもないわね」
美香は呆れて腰に手をつく。
「私は美香達と違って恋しに来たんじゃなくて遊びにきたの。色気なんて必要ない。今必要なのは体力」
声を強めて力瘤を作って見せると、美香は眉間に指先を当てて大きくため息をついた。
「いくらスタイルが良くて水着が似合っていようとも、アンタはライバルになりえそうもなくて私は安心だわ」
「そりゃどうも。ごちゃごちゃ言ってないで海入ろう」
「はいはい」
呆れた風を装う美香だけど実際遊ぶことだって楽しみにしていたようで、海に入ってしまうと私と同レベルではしゃぎだした。
朝の便で羽田から出発した私達は昼前には那覇空港に到着し、そのまま旅館に荷物を置きビーチに繰り出した。
2泊3日の旅行は初日が海水浴で、2日目の3日目は自由行動。旅館の夕食だけ交流のため参加者全員で摂ることになっている。
半ば強制的に美香に誘われて来ることになった旅行だったけど、参加するからには全力で楽しみたいと思うのが人というものだ。
なので、私は日常のことなどすっかり忘れて楽しむことだけを考えた。
でもって、一課のイケメンどころを引っ張り出してきた恩を利用して美香を引きずり回している。
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