プロローグ

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陸は他の女みたいに媚びないのが良いよな。 お前の明るくて元気な姿見てるとこっちも元気になる。 俺も陸みたいに仕事頑張るよ。 ――好きだ。 そう何度も言ってもらった1年間。昨日まで、いや、ついさっきまでその言葉を信じていた。 「お前といると疲れるんだ…。俺達合わないと思う」 桜が淡いピンクの花を落とし新緑が世間に彩を与え始めた土曜の朝。良也に呼び出しを受けて私が出向いたのは会社近くのカフェだった。 仕事が異様に忙しく、1ヵ月近く2人きりで会ってなかった。だから良也から何がなんでも会いたいと電話がきたとき、かなり熱烈なデートのお誘いだと心が弾んだ。 そして間抜けにも軽い足取りで入店し、待っていたのは完全に予想外な展開。   何故か私は一組の男女を前に女にしてはデカい図体をできる限り小さくして座っている。男は言わずもがな恋人の良也だ。そして女の方――。 見るからに私と正反対の可愛らしい女の子。少し明るめのブラウンの髪はくるんとカールしていて、くりくりした大きな目に、小さめの鼻と、ピンクのグロスが似合うバランスのとれた唇。 170センチ以上という長身に無造作ショートヘア、久々のデートだというのに会社に立ち寄る用事があるからといっておしゃれのおの字もないスーツのパンツスタイルでのこのこやって来た私とは似ても似つかない。 木野由香里さんというらしい。私は知らなかったけど、同じ会社の総務部で働いている1つ下の後輩。 そして「新しい彼女」だと、良也の口から紹介された。
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