プロローグ

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金縛りが解けると土曜日だというのに会社に向かった。昨日最後に資料室を使った際に鍵をポケットに入れたまま持って帰ってしまったのだ。基本的に土曜は休みなのだが、我が営業一課は年中忙しく、休日出勤者が多い。よって鍵がないと周りに迷惑がかかる。 会社に来る気分などではもちろんなかった。けれど、今朝から頭にあった鍵を返すという作業を終わらせないと、次のことが何も考えられない気がして、足が自然と動いた。 人気のない正面エントランスから真っ直ぐエレベーターに向かう。私の勤める営業一課は3階。一課から三課まである営業がすべて3階に並んでいて、エレベーターを出てすぐが三課、その隣が二課、一番奥が一課。そしてそこから廊下を曲がった先に資料室がある。私が持っているのは第一資料室の鍵。最奥の部屋だった。 エレベーターから降り、廊下を進む。ボックスに鍵を戻せば私の仕事は終了だ。 営業一課の扉の前に立つ。中から人の気配がした。 途端ドアを開けたくなくなった。 私は扉から離れて奥へと進む。 第一資料室。たどり着いた扉の向こうは暗く、人の気配はない。
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