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同居人のことを思い出し、反応がない竿を巻き上げ、バケツを手に取って歩き出した。
「ハッ、ハッ、ハッ……」
雑多に木箱や段ボール箱の積まれた裏道らしい道を走る少女。その十数メートル後ろには整った制服に身を包んだ三人の男達が追いかけてくる。
先を走るポニーテールの少女は、肩越しに彼等との距離を確かめながら走り続ける。
「ハッ、ハッ、キャッ!?」
暗がりで見えにくかったからか、足下に置かれていた角材に足を取られ、転倒してしまう。
「ハッ、ハッ……。ようやく追いついたぜ、お嬢様よぉ」
三人の内、唯一マントを羽織った少年が、少女を見下すように立つ。少女は忌々しそうに少年を睨む。
「くっ、よりによってアナタが出て来るとは思わなかったわよ、このお坊ちゃま」
少女が小馬鹿にしたように言い放つが、少年は軽くあしらうように笑う。
「残念だったなぁ。このエリートである黄河大吾様が、捜索に選抜されたのがお前の運の尽きだ、四方院!」
「くっ」
悔しそうに、目の前に並ぶ男達を睨む少女。逃げ場のないこの状況、もはや捕まることは避けられない。少女は自らの覚悟が、願いがあまりにも呆気なく幕引きとなることに、涙を禁じ得なかった。
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