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災厄が落ち着いた後も、空は厚い雲に覆われていた。
そしてこの星は有毒な宇宙線が降り注ぎ続け、日中は80℃を超え、夜間は-50℃に至るという生物の存在を許さない死の星となった。
環境変化に加えて、人類の活動範囲と文化レベルが劇的に後退させられるなど、災厄の爪痕は凄惨なものであった。
アビスとセレネの間では、小さな争いはあっても結局は持ちつ持たれつの関係が続いていた。
都市ユニットのエネルギーが切れたら、その度補給を必要とするセレネは、地上の採掘基地を管理するアビスに頼らざるおえなかった。
また、災厄により多くを失ったアビスも技術力でセレネに頼らなければならなかった。
しかし、長い年月を経ても溝が溝として残った理由として、セレネには自らを優良種と考えアビスの人々を下等種と卑下する思想を持つ者が多かった事がある。
またアビスにおいても、災厄をほぼ無傷で乗り切ったセレネ対しての不信感は、時が解決するに至らなかった。
両者は必要以上に相手を刺激しないようにしてきたが、決してお互いに歩み寄ることは無かった。
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