プロローグ

2/8
前へ
/80ページ
次へ
「……少佐。発進準備、完了しました」  通信マイクから流れる武骨な声が、現実へと引きずり戻す。 「現状は劣勢です」  優勢な戦場など数えるほどしかなかった。  しかし我々には、俺には、退くという選択肢は無い。  仲良く握手するには血を流しすぎたのだ。 「了解した。アビスガード防衛軍所属、特殊遊撃隊、ロイヤルコフィン、ジルウィード発進する」  愛機ロイヤルコフィンはカタパルトで射出体勢に入った。  正面のハッチが開くと激い砂煙が流れ込む。外は砂嵐のようだ。  隙間からは真っ赤な、ステラの空が見える。  彼女はこんな戦いは望んではいないだろう。  しかし、今は仇を討つ事しか考えられない。  自分の痛みの前では他人の痛みなど小さな事なのだ。  射出時の凄まじいGと共に機体は空中に投げ出された。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加