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「……少佐。発進準備、完了しました」
通信マイクから流れる武骨な声が、現実へと引きずり戻す。
「現状は劣勢です」
優勢な戦場など数えるほどしかなかった。
しかし我々には、俺には、退くという選択肢は無い。
仲良く握手するには血を流しすぎたのだ。
「了解した。アビスガード防衛軍所属、特殊遊撃隊、ロイヤルコフィン、ジルウィード発進する」
愛機ロイヤルコフィンはカタパルトで射出体勢に入った。
正面のハッチが開くと激い砂煙が流れ込む。外は砂嵐のようだ。
隙間からは真っ赤な、ステラの空が見える。
彼女はこんな戦いは望んではいないだろう。
しかし、今は仇を討つ事しか考えられない。
自分の痛みの前では他人の痛みなど小さな事なのだ。
射出時の凄まじいGと共に機体は空中に投げ出された。
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