19人が本棚に入れています
本棚に追加
スロットルを全開にし、高度を上げていく。
6000……7000……。
「調子は70%ってところか。まあまあだな」
「急ピッチで修理しましたがそれが限界です。少佐の腕があれば問題ないでしょう」
整備員が不満そうに皮肉混じりの通信を返す。
連日の戦闘により、機体へのダメージの蓄積は酷かった。
それをここまで仕上げただけでも整備班は良くやったといえる。
「言ってくれるじゃないか。まあ、やってみるさ」
「ご武運を」
遠距離無線をOFFにする。
ここから先は近距離無線のみにしなければ、技術力で劣る我々はたやすく傍受されてしまう。
正面のモニターに広がる、お世辞にも美しいとは言えない景色。
草木は一本も無い。虫も鳥もいない。赤茶けた荒野だけが広がる世界。
防護服無しでは、10秒と生きられない殺人的な大地。
これが《ステラ》である。
「この星は泣いている、か。確かにそうなのかもな」
物思いにふけっていると早くもレーダーに反応がある。
識別は赤。
セレネ共和国、我々の敵だ。
そしてリアの仇。
それは同じ星の上で生きる人間である。
最初のコメントを投稿しよう!