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家族がこの赤い電車で繋がった引っ越しだった。
でも、引っ越してすぐ 父は体調を崩した。
入院することになった。
そして、引っ越してすぐ 母は迷子になった。
大きなカゴの付いた母の自転車は、新居の物置きに入った。
年老いて 少しづつ欠けた部分を、お互いの存在で補完していた夫婦のバランスが崩れてしまった。
母は夜中に買い物に行ったり、入院している父を捜しに出るようになり、その度に弟が救出に向かった。
真夜中で すぐに迎えに出られないワタシに代わって、母を新居に送り届けてくれたお巡りさんもいた。
ドアフォンの画像には、恥ずかしそうに下を向いて、背中を丸めた小さな母の姿が映っていた。
母が一人で住むことになってしまった、両親の新居。
そこでご馳走になる母の料理は ワタシを驚かせるようになった。
具のない味噌汁。水加減のおかしい白米。
ワタシは、母の作る美味しい餃子を食べることは もう出来ないだろうと思った。
いつもどんな時も笑顔で、いつもどんな時もワタシの味方である母。
母の作る餃子を食べれば、次の日には悩んでいた大抵の問題は"どうでもいいこと"か"なんとかなること"に変わった。
そんなワタシの母を病気が消していく。
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