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赤い飛行機雲
よく晴れた日だった。
天気がよすぎてけだるい。早く授業が終わらないかと、ぼんやりと見上げた。
学校上空は航路らしく、日に何機も飛行機が行き交うのが見える。ちょうどその時も、かなりの上空を進む飛行機が見えていた。
通りすぎた後に飛行機雲が筋を引く。その色に、俺はぎょっとして目を凝らした。
いつもの白い筋とはまるで違う、真っ赤な色の飛行機雲。
航空ショーの映像でなら、派手な色の飛行機雲を見たことがあるけれど、ここは普通の飛行機の航路だ。ショーがあるなんてニュースは聞いたことがないし、そもそもそんな場所に選ばれる筈もない。
機械の故障? だとしたら、今頃飛行機内は大パニックだろう。あんな真っ赤な煙を吹き出しているんだから。
何かニュースでやってないかと、こっそりスマホに目を落とす。これだけの規模の飛行機トラブルなら、俺以外にも見ている人は大勢いるだろうから、ネットで速報になっているのではと思ったが、それっぽいニュースはまったくない。
こんな一大事に、どうして誰も騒がないのか。そう思い、もう一度空を見たが、赤い飛行機雲はもうどこにもなかった。
風に流されてしまったのか? いや、さっきの今なら、広がりはしてもまだばっちり見える程度には残っている筈だ。
でも空はよく晴れて、ただ青く広がっているばかりだ。
俺の気のせいだったのだろうか。…この時はそう思ったが、翌日、テレビや新聞を大ニュースが賑わした。
ジャンボジェット、消息不明!
墜落やハイジャックではなく、航行中のジェット機が、ふいに姿をくらまし、そのまま失踪してしまったという大事件。
今もレーダーなどで捜索は続けられているが、手掛かりは一切ないらしい。ちなみに、その飛行機が消息不明になったのは、公表された時刻と照らし合わせると、ちょぅど、俺が学校の窓から空を見上げていた頃だった。
パイロットや乗客はどこへ行ってしまったのか。そもそも、あの赤い飛行機雲を目撃したのは、本当に俺だけだったのだろうか。
真っ赤な飛行機雲を作りながら、そのままどこかへ消えてしまったジャンボジェット機。
…一ヶ月が経過した今も、その所在は確認されていない。
赤い飛行機雲…完
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