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「ここ…だな,オリエンテーションの教室は…」
大学が始まりキャンパスは学生でごった返している。優志は大学院の教室棟で,修士課程のオリエンテーションが開催される小講堂に来ていた。
「ん,ここだな。ほら工学部の助手が機器設定している」
「じゃあブライス,行ってくる」
「ああ,終わったら研究室に来いよ。それからランチにしよう」
「わかった。俺,もう腹が減っているよ」
そう笑った後でブライスを見つめる優志の瞳は,新しい世界に踏み出す興奮で煌めいていた。優志はくるりと踵を返すと確かな足取りで講堂に入って行く。
ブライスはその背中に自立した大人の男を認め,同時に彼が自分と一生を共にする恋人であることを誇らしく思って,一人微笑んだ。
やがてブライスも講堂を後にし,教室棟の外に出た。
見上げると季節が変わって空は高くなったが,今日もシアトルは清々しく晴れ渡っていた。
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