湖の約束 3

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 しまった,と思った。問い詰めたりはしない,そう決めていたのに。 「いや,いい。…優,気を付けて帰れよ。また明日な」  ややあってから,ブライスは抱きしめていた腕をほどいた。頷いて優志はブライスの横をすり抜け,出入り口に向かった。ドアで立ち止まって振り返った顔には,苦しみと申し訳なさと,それからブライスへの愛情が混じっていた。 優志は一人研究室に残っていた。もう夜の9時を過ぎていて他に学生はいなかった。 誰かが入ってくる気配がしてびくっと緊張した。こんな時間に誰かとふたりきりになってはだめだ,そうブライスに釘を刺されていたじゃないか…。 ―ああ,ユウシ,君だったのか,がんばっているね… ―ところでユウシ,ちょっと耳に挟んだのだけど,君,ブライスっていうボーイフレンドがいるの… 頭が切れて,いい男らしいいね… ね,ブライスはどんな風に君に触れるの… どんな風に君にキスするの…こう…かな… ―やめてくださいっ… ―僕をブライスだと思ってみてごらん… ほら,こんなになっているよ,ユウシ,…ブライスを思うとこうなるんだ… ―やめて…ください…いやだ…やめてっ… ―ユウシ,とても感度がいいね…ブライスがそうしたの…ブライスの手が… ああ,ブライスが欲しいんだね,わかるよ… 可愛そうに…ブライスは今ここにいないからね… ユウシ,僕をブライスと思って良いんだよ… ―ん…ん…いやだ… ―ユウシ,可愛いね,僕をブライスだと思って身体が反応してる… 気持ちいいんだね,ブライスに触られて… ユウシ,これは,ほら,ブライスの… 僕がブライスの代わりに…ほら…ここも… ユウシ,ブライスと繋がりたいと思っているんだね… ―ユウシ,今は僕がブライスだ,だから,良いんだよ… 「あ…あぁ,やめてっ,先生っ…」  優志は自分の発した言葉で目を覚ました。  暗い部屋にカーテンのない窓から明かりが差し込んで,天井が白っぽく見えた。 「はぁっ…はぁっ…はぁ…あ…あ…」  自分が仙台ではなくシアトルの寮にいるのだとわかるまで,しばらく時間がかかった。 「何でこんな夢を…う,うっ…」  優志は枕にうつぶせになった。荒い息が嗚咽に変わって明け方まで止まらなかった。
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