湖の約束 3

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翌日の昼,行きつけのカフェテリアでブライスはテーブルを挟んで優志を眺めていた。6月末ともなるとカフェテリアを利用する学生は少なく閑散としていた。  ブライスはラザニアがメインのランチを食べ終わっていたが,優志はハンバーガーをぽそぽそとかじって半分残していた。 「ダイエット中のモデルみたいだな」 「……」 「来週から夏季講座だな。今聴講している工学部の講座はどうだった?わかりやすかったか?」 「まぁまぁかな。留学生アドバイザーは,俺のレポートの書き方にまだ問題があるって指摘してくれたから,夏季講座後のESLでレポートの書き方を集中して勉強しようと思っている…」 「俺たちにとってもレポートは簡単じゃないよ。回数をこなして慣れていくのが一番だ。夏季講座でも優のレポートを見てあげるつもりだけど…」 「そうしてもらえると,助かる…申し訳ないんだけど」 「喜んで手伝うよ。逆の立場なら優だってそうするだろ。講座が終わり次第,研究室に来てもいい。俺も毎日研究室に居るから,聞きたいことがあればすぐに答えられる。それと優,俺,夏季講座の主担当の准教に頼んで,時々講座を参観できることなってる。助手のアシスタントってところだ。よろしくな」 「……」 意外だ,という顔をしている。 「勉強の話は終わりだ。…優,この週末はどうする?ウィンドサーフィンもいいと思うよ。ドクター・ハーレーから借りたから,道具がもううちにあるんだ。だからいつでもできる」 「…ごめん,ブライ,まだ湖に入る気分じゃなくて」 「そうか…。せめてボートにでも乗らないか。今晩の夕食後迎えに行くよ。夜の湖,懐かしいだろう?」  一瞬優志の顔に躊躇する表情を読み取って,ブライスは「決まりだ」と微笑みトレーを持って席を立った。 レイク・ハウスは大学の敷地内の最も北に建ち,建物のすぐ北側には一般道が走っている。 夕方,ブライスはそこに車を止めて優志を迎えにきた。7時を過ぎていたが,まだ陽は落ちきっていない。戸惑う優志をさっさと車に乗せ,わずかな距離を走らせてボート乗り場に着いた。 「優,そっちの毛布を持ってきて」  ブライスに言われるままに優志は何枚かの分厚い毛布を運ぶ。ボートの船底にはすでにブライスが分厚いマットを敷いていた。
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