湖の約束 3

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その午後,宇宙航空工学部の研究室…。 「…マット,お前に会いたくて早く月曜にならないかとじれったかったよ…」 「ブライス,やっと俺の気持ちが通じた…」 「…早く報告しろ」  マットはスマートフォンを取り出して,メモアプリを開いた。 「えっと…ジョーゼフ・ハーヴィッツ准教授は36歳,独身。サンフランシスコ生まれでユダヤ系,ローティーンでゲイを自覚。カリフォルニア工科大学出身で,院生時代に宇宙航空機の垂直着陸プロジェクトに参加して業績を認められ助手に。院生のころから複数のストレートの学部生と関係を持っていた。助手になってから,ボーイフレンドの一人がハーヴィッツとの関係で精神を病んで,そのことが教授陣にばれた。大学に居づらくなり,先輩教授を頼ってワシントン大に移籍」  ブライスは眉間に皺を寄せた。 「ここからは昨日メールで報告済み。ワシントン大に着任して一年後,ストレートの未成年学生と関係を持ち,保護者から大学側にクレームが来るという事態になった。その頃日本の大学との指導者交換制度に応募して日本へ。しばらく変な噂は聞こえてこなかったけれど,そこで指導に当たった佐々木優志の現在の姿を見ると…」 「もう…いい」 「こいつは…ビョーキだね。自分よりうんと若いストレートを手込めにするっていうビョーキ」 「…容赦は不要だな。優秀な研究者だが下半身が犯罪者並に緩い」 「見た目はいいのに残念だよな。俺の友だちが,1度抱かれたいって言ってたよ。信じられないぜ」 「…生々しい友人関係だな」 「ゲイ・コミュニティのネコ繋がりは大事にしているんだ」 「…俺のことも調べると分かるのか?プリンストンは遠いが…」 「あ,それはもう調査済み。ブライス,恋人運悪過ぎ」 「……」 「俺,今回頑張ったよね。これだけ調べるのに,前カレとしたくもないデートまでしたんだよ…」 「この頃日照り続きだったから良かったじゃないか」 「うわっ,何で俺の気持ちを分かってくれないの?」 「マット,俺はゲームをしている訳じゃないんだ。月並みだけど,優志は俺にとってかけがえのない存在なんだ。他の誰かとは比較できないんだよ」 「…わかってるよ。俺もそういう奴に出逢いたい…」 「大丈夫さ。お前は黙って入れば人目を惹くから,諦めなければいつかきっと」 「全然っ慰めになってねーっ」
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