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「…だから,俺は自分のことが信じられない。今の自分は,大嫌いなんだ…。こんな俺,ブライに愛される資格がないよ。だって,ブライスがそばにいると,自分の過ちがいつも頭をちらついてしまう」
「俺が…優のそばにいると…あいつとのことを思い出して辛いのか?」
優志は下を向いてしまった。
「優,それもあいつの狡猾な策なんだ。そうやって優が俺から離れるのを待っているんだ。そのうち,あいつが優に近づいて来る…」
目を剥いて優志が顔を上げた。
「いやだ,それは絶対にいやだ。二度と彼の思い通りにさせない…」
優志は激しくかぶりを振った。
「絶対に,二度と,彼の,思い通りには,させない」
優志の全身からハーヴィッツへの嫌悪が漏れ出ていた。
「きっと大丈夫だ,優。絶対そうさせないように,俺も全力で向かうから,大丈夫だ」
ブライスは,ためらいながら優志の脚の間で組まれた両手を握った。
「俺がプリンストンで付き合った男のこと,話したよな。ポリガミーで,俺と付き合っている間に何人もの別の男と関係をもっていた」
優志は思い出していた。初めて結ばれる時に,ブライスは自分の恋愛経験を優志に明らかにしていた。
「だから俺はそういうことでは傷つかない」
優志の手を包むブライスの手に力がこもった。
「俺にとっては優とあいつとの間にあったことは何の障害にもならないということだ。何があろうと,俺は優のことが好きだ。こんなにも優のことを愛してる。いつだって優にキスしたいし,抱き合いたい。でも,今は我慢してる。優がそういうことを求める時が来るまで…」
ブライスは優志の顔をのぞき込むように身体を丸めた。
「…優は,俺のこと,好きか?」
ぴくり,と優志の身体が動いた。優志は内にある答を表に漏らさぬように,身体を自分の意志で固めているようだった。ブライスは握っていた手を外し,幼子にするように優志を抱きしめた。
「俺は優を諦めない。諦めなければ何とかなるって教えたのは,優だ。絶対諦めない」
優志のこめかみにそっとくちづけして,ブライスは離れてベッドの縁に座り直した。
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