151人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ,お母さん,…すごい量の肉だね。また“新しい友だち”にお裾分けするんだね」
「え,ああ,そうね。もう“新しい友だち”ではない…かな」
「ふーん」
アセナにも人生の転機が訪れているのだろうとブライスは判断した。
週が明けて優志を寮に送っていったブライスには,どうしても確認したいことがあった。
「こうやって週末に優と一緒に過ごすの,期待していいかな…」
「ブライ,何だか申し訳なくて…。ブライとアセナの好意に甘えっぱなしで…」
「甘えてくれるのが望むところ,なんだけど…」
「ん…」
「それとこれくらは…」
ブライスはさっと周囲を見回して人影がないのを確かめた。そして優志の頬にキスをした。離れる間際に,唇を寄せて優志の唇に重ねる。唇を丸めて押しつけ,離す瞬間に強く吸う。キスらしい音がして優志を慌てさせる。
「いいだろ…?」
ブライスはにっこり笑って両手を上げて,一歩後ずさった。止めて,と言うつもりだった優志の口からは,ブライスのその姿に甘い溜息が出ただけだった。
さらにブライスは数歩後ろ向きに進んで,そういえば,と気づいた様に言う。
「ラボで英語の勉強を続けるんだろ?昼はカフェテリアで会えるね。じゃ,あとで」
あくまで爽やかな空気を崩さずにその場を去った。後に残った優志は,生じた熱をなぞるように自分の唇に手を当てていた。
―さて,補強工事と…
ブライスはそのまま大学中央部にある,宇宙航空工学の教官室棟に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!