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「強要ではないっ,同意の上だ!」
「そのことについては,優志とはとらえ方が異なるということですね。必要があれば第三者に検証してもらいます。具体的には警察になるでしょうが,今のところこの点のとらえ方が一致しなくても話は進められます」
「……」
ハーヴィッツの顔から徐々に色が失われていく。
「優志は3度の性的な嫌がらせについて,先生から暴力を受けた,つまりレイプされたと認識しています。
優志が比較的簡単に暴力に屈してしまったのは,優志が先生に指導される立場であったことと,先生が優志の個人情報を利用して心理的に追い詰めたからだと判断しています」
「何て馬鹿げた話だっ」
「…残念ながら馬鹿げてはいません」
初めてブライスの口調が苦しげになった。
「優志は日本でのことと,こちらでも先生から関係を続けることを強要されるのではないかと恐れ,実際そう求められたことに苦しみました。関係を続ける意志はないと,先週金曜の夜に優志本人が先生に伝えましたね」
「君にはぺらぺら何でも話すのだね,ユウシは」
「優志が先生に意思表示をしたことは事実だと見なします」
「待て,待て…,何だこの話の進め方は。まるで裁判の尋問のようだ。君は裁判官を気取っているのか?」
「…いいえ。事実を確認しただけです。事実と異なっていては進められないのです。
では先生,この問題についての解決方法を申し上げます。日本で優志にしたことを優志に謝罪し,今後必要以上に優志に接触しないと約束すること,この二点のみです」
「謝罪…と約束?」
「はい。優志は先生に会うのを避けていますので,連絡方法は電話です。文書では後に残るのが嫌でしょう,先生。…かなり受け入れやすい解決法だと思いますが…」
「好き勝手なことを言っているね…。私は,君が『事実』として言ったことは全て事実ではない,と言うこともできるんだが…」
ブライスは組んでいた脚をほどいた。
「…そうすると,かなり事態は困難なことになります…」
ハーヴィッツの表情が少しだけ緩んだ。
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