湖の約束 3

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 正直なところ,ブライスは熱烈な再会を思い描いていた。人前では男同士の接触を恥ずかしがる優志だが,触れ合いたいという欲求は強くもっていて,その思いが溢れ出ていたものだ。それは,彼を注意深く見ていればわかることだった。だから,安心してベッドに誘うことが出来たし,いつも期待通り,いやそれ以上の悦びを与え合うことができた。 ―疲れていたんだよな。少し休んだら,きっと元に戻るに違いない…  しかし,優志の痩せぶりには内心ブライスも動揺していた。毎日のように通信アプリでメッセージを送ったり通話をしたりした。週末はテレビ電話で対話していた。しかし最後の半年は優志の忙しさを考えて,2,3日に1度程度になっていた。 優志に体重が減るような何かが起きたのかもしれない,という心配はすぐに湧いてきた。しかしそれを押しやってでも,ふたりの再会を喜び合いたいという願いを優先させたのだった。 ―きちんと見守っていこう。何かあったのであれば,必ず俺に言うはずだ。  優志が身なりを整えてリビングに来た。白いポロシャツにジーンズ姿だ。少しスナックをつまみお茶を飲み,それから早めの夕食となった。 アセナが作ったエジプト料理を堪能し,話題も研究のことや家族のことなど様々あり,一見,食事の場は賑わっている様に見えた。  痩せた優志は黙っていると表情に翳りを帯びていて,痩せた原因は何かと気になる一方で,23歳という青年の盛りの色気を醸し出していて,ブライスにはこの上なく魅力的に映った。文字通り,優志から目が離せなくなっていた。 「じゃあ夏休みの間は,工学部の夏季講座の中から,ユウシの研究に繋がるものを選んで学ぶのね」 「はい,少しでもこちらの研究の習慣とかサイクルに慣れておくのがいいだろうと思って」 「それは,あのハーヴィッツ准教授が勧めてくれたことなんだな」 「え,ああ,そう。…こっちにいる助教に連絡を取ってそういうコースを準備してくれているはず。明後日,大学に行って確かめるつもりなんだ」 「そうか…。先週,学部の宇宙航空工学の夏季講座を調べたとき,内容未定っていうコースがあって,今の時点で未定はおかしいなと思っていたんだ」 「それは,ハーヴィッツ先生の帰国の日時が5月末まで決められなかったみたいだから,内容を詳細に出来なかったんだと思うよ」
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