湖の約束 3

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「マット,あいつの『魅力』を知って,どうするんだ?」 「…その,あの人はストレートの子を食い散らかしてきたわけだろ?自分だけオイシイ思いをしているじゃないか。 もしあの人が,手を出した相手に逆に捨てられる,なんてケースがあったら,気分がいいだろうなって…」    「そんなことを考えていたのか…。マット,お前にそれができると思うか?」  ブライスの表情は懐疑的だ。 「んん…正直成功する自信はない。…まぁ,彼の垂直着陸する宇宙航空機開発には興味があるから,それを学ぶだけでもいいんだけど…」 「……」 「全ては大学が始まってからだ!」  その週末にマットはオレゴンの田舎にある実家に帰ることにしていた。マットは優志とブライスのふたりを家に招待してきた。大きな家なのだという。 ブライスが車を出し,3人で運転を交代しながら8時間かけて向かった。 「わぁ,すっごい広い!」  マットの実家の前の広大な土地を見て,優志は思わず叫んだ。マットの家は牧畜と酪農を営んでいた。家族は両親と大学生の妹と高校生の弟。寡黙な弟は父親似でがっしりとしていて,すでに家業にかなり貢献していた。母親と妹は快活で,マットは母親似だ。  ブライスと優志のふたりはマットの家族から温かく歓迎された。着いて早々にマットが出してきた未開封の組み立てコンピュータを,優志が1時間で完成しネットの開通まで整えてやると,家族の歓迎振りは並々ならぬものとなった。  家は平屋だが部屋数が多く,それぞれの部屋が大きい。ゲストルームも十分に広かった。 「ここら辺は土地が有り余っているからね。あ,おふたりさん,盛っても親がいるから遠慮してね。どうしてもって時は,離れた所に納屋があって屋根裏に干し草があるからそこでどう,わっ!」  マットの顔面に枕が命中した。  翌日から,マットがちょっとした仕事のしかたを教えながら牧場ライフを体験させてくれた。ウシを納屋から外に移動させて干し草を替え,馬にブラシをかけてえさをやった。早起きしてウシの乳搾りも2回やらせてもらったが,これは戦力にはならなかった。  仕事が一段落すると,マットが大人しい馬を選んで乗せてくれた。優志は大はしゃぎだった。 「乗馬なんて,小さい頃に観光牧場のポニーに乗って以来だ!」  優志は乗馬に夢中になり,馬があいていれば乗馬ばかりしていた。
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