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頬に軽くキスが落とされ,それから唇がそっと合わされ押しつけられてちゅっと吸われた。
「…俺も,ブライのこと,愛してる…。だから,全部…あげ…る」
―全部…全部,受け取ってもらった…?
意識が朦朧とした中で,何かを忘れていたような気がして,でもそれが何だったのか考え続けることができなかった。
意識が暗い淵に沈んでいく時,ブライスが優志を抱きしめたから,優志は無意識に手をブライスに伸ばした。
ここはブライスの腰,そう思ったところで優志の手が触れたのは,肌に張り付いた薄い感触の布だった。
優志は,困惑していた。
モーテルの夜から2週間。
始めは,こういうこともあるかなと,どうにかして自分を納得させていた。ブライスが優志を可愛いと思う余り,気を失うようにして眠りに落ちるまで優志を追い詰めた。そのせいで自身の欲望が達せられなかったのだと。
だからブライスは最後まで下着を着けたままだったのだと…。
しかし,2週間経った今でも,ふたりの営みは優志の吐精で終わる。ブライスが下着を外すことはない。
優志がブライスの方へ手を差し伸べると,やんわりと押し戻される。
「優志の身体が慣れるまで,焦らないでいこう…」
―慣れるも何も,3年前に初めて身体を重ねた時から自分には何の問題も無かった,最初から良かったよ…
「俺たち,お互いの気持ちを確かめ合った後,時間がなくて,さぁやろう,っていう感じだっただろう?
そこのやり直しをしよう,ゆっくりと,な」
ブライスの言うことはわかる,理屈はわかる,でも,と優志は思う。
―その下着の中が,少しも大きさを変えないのは,なぜなんだ…
体調が悪いのだろうかと,思う。
そして,考えを巡らせるうち最後に辿り着いてしまう,ある不安。
普段は考えないようにしているが,心の奥底に貼り付いてはがれない不安。
―ブライは,本当は嫌悪しているのではないだろうか…俺を。俺の身体と繋がるのを…
優志は不安でたまらず,どうしたらいいのかわからなかった。
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