湖の約束 3

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「…どういうことだ。ハーヴィッツ先生が帰国したらその講座の指導に加わるってことか?」 「…そう…いうこと。彼がどのくらい関われるかで,コースのゴールが変わるそうだから…」 「ふーん…」  優志のこれからのスケジュールについては,尋ねることが尽きることはなかった。  食事の後,アルコールではなく紅茶を飲んでいた優志は,自分から休みたい,と望んだ。 「まぁ,そうよね,ユウシは長旅をしてきたんですものね。明日はゆっくり休んでいてね。早く時差を克服するには睡眠が一番よ」 「ありがとう,アセナ。では,お先にお休みなさい」  ゲストルームに向かう優志にブライスも当然のようについて行く。前回泊まったとき,アセナが家にいれば身体を重ねることはしなかった。優志はそう言う意味の意識をしている様子はなかった。  部屋に入ると優志はブライスを振り返って,少し申し訳ないような表情をした。 「…いろいろとありがとう,ブライ。…今日は俺…何だが疲れていて…」  言いながら,半歩後ろに下がった。 さ 「ああ,ゆっくり眠れよ,優。夏休みも休みじゃないようだし,院生になれば慢性の寝不足になるし…。うちにいる間はゆっくり眠りな」 「本当にありがとう。助かるよ」  優志の声に,安心した気持ちの表れなのか,明るさが戻った。 「でも…お休みのキスはしていいよね,優」  ブライスが静かに言うと,優志の身体が一瞬ピクリと反応して,顔から表情が消えた。 ブライスは優志の前に進んで両手で優志の顔を挟み込んだ。焦点を結んでいなかった優志の視線が徐々にブライスの顔を登り,ようやく目に辿り着いた。ブライスの顔が近づいても優志は目を閉じなかった。  唇が触れ,丸めて小さく吸うのを繰り返した。ブライスが唇を上下に押し明けて舌を侵入させた。優志は拒むわけでも迎え入れるでもなく,じっとしていた。  やがてブライスが舌を絡め優志の口中奥深く押し入って,合わさった口中の水分が多くなってくると,優志は目を閉じてブライスの舌の動きに応え始めた。初めて優志の手がブライスの背中に回された。 「ん…ふぅ…んっ」  優志が感じているのがわかった。  ちゅるりと,優志の口中で溢れかけた唾液をブライスが吸った時,優志がはっとしたように両手でブライスの手を引き離した。 「…も,もう…止めて…」  
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