湖の約束 3

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 優志の呼吸が荒くなるのが聞こえてきた。 「…カップルでも別の相手と性交渉するゲイは多い。 でも,優志という人間と結ばれることを望むなら,俺はそういうゲイになってはいけなかったんだ…」  言葉にしてから,深い後悔の念がブライスを覆った。 「あぁっ…くそっ」 ブライスは脚の上で頭をかきむしった。 「あの頃の俺は,ものすごく優を欲していた,近くに居て欲しかった…。こんなことになるなら,仙台に飛べば良かった…。馬鹿だ,俺は…。  優,本当に済まない…」  ブライスが話し終えるとあとは波の音だけが続いた。このまま優志はこのボートを去っていくのではないかと思い始めた頃,ボートが少し傾いた。  優志がブライスに近づいて来た。ブライスの前に立ったかと思うと,いきなり頭部が上方に引っ張られた。優志がブライスのシャツの両襟を掴んで引っ張ったのだ。 「ブライスの,大馬鹿野郎! 俺という者がありながら,他の男と寝ただって?」 「…っ」  シャツの襟を掴む優志の拳が数度揺すられ,ブライスの上半身が揺らいだ。 「それで俺に嫌われるんじゃないかとビクついて勃たなくなった?ふざけるなっ!許さないからな。  そういうブライは…しばらく俺に顔見せんな!」 「…ぅっ」 「…俺が納得するくらい反省するまで会わないから。  それから,ゲイならみんな恋人以外とヤるっていうんなら,俺はゲイをやめる。一人の男をずっと愛するただの人間でいる。ブライが2回別の男を抱いたからって,俺は諦めないから。ブライを離さないから,忘れるなよ。  ブライが,うだうだおかしな事を二度と言わないで,何の迷いもなく俺のことを好きだって言う覚悟ができたら,そしたら…会ってやる。  一週間後,この時間,ここで,だ」 「…優…」 「ちっさいこと考えてる暇があるんなら,マスでもかいてそれをでっかくするようにせいぜい鍛えろよ」  襟を離して,優志が息をついた。 「じゃぁなっ」  そう言ってハシゴを登り,来たとき同様走って行った。  残されたブライスは,呆然としていた。 寮に戻った優志はスマートフォンを取り出した。 「…あ,お母さん,俺。…ん…ん,お願いがあって…。送って欲しいものがあるんだけど…」 通話を終えたとき,水滴が一粒,優志のスマートフォンの画面にこぼれた。
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